骨・関節・筋肉などの腫瘍について

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整形外科で取り扱う腫瘍には、骨から発生する「骨腫瘍」と皮膚、皮下組織、筋肉、神経などの臓器以外の軟らかい組織に発生する「軟部腫瘍」が有ります。悪性の腫瘍に関しては,発生頻度自体は低く、希少がんの一つとなっています。しかし悪性度が高いものが多い傾向にあり、治療としては化学療法や放射線療法などを組み合わせた治療が行われます。

そのため、悪性腫瘍と診断された場合には、専門の施設で治療を行う必要があります。また悪性か良性かを診断するために、より専門的な検査が必要になる場合もあります。その際は提携する専門病院を速やかにご紹介いたします。

骨・関節・筋肉などの主な腫瘍

悪性骨腫瘍

悪性骨腫瘍には「原発性骨腫瘍」と「転移性骨腫瘍」があります。原発性骨腫瘍は10歳代に発症しやすい骨肉腫に代表されもので、膝や股関節、肩などの近くに生じることが多くなっています。原因ははっきりとはわかっていません。また転移性骨腫瘍は肺がんや乳がんなどが血液やリンパの流れによって骨に転移するもので、悪性骨腫瘍の大部分を占めています。転移性骨腫瘍は脊椎にも高い頻度で現れます。

症状としては、ケガをしないのに痛みや腫れが現れ、長引いているといったことが多いようです。骨がもろくなって、骨折することにより発見される場合もあります。悪性骨腫瘍と診断された場合は、まず抗がん剤による化学療法を行い、手術が可能な場合は腫瘍の切除を行います。切除後、機能を保つために人工関節を用いたり、人工骨やほかの場所から持ってきた骨を移植したりすることがあります。状態によっては四肢を切断する場合もあります。

手術終了後は、化学療法を再び行う場合もあります。治療がひと段落した後も、再発や転移の有無を確認するために5年程度は定期的に外来で経過をみる必要があります。転移性の場合は、肺がんや乳がんなどを担当した医師と連携した治療を行っていきます。

良性骨腫瘍

良性骨腫瘍は骨に発生した腫瘍のうち、転移などもせず、生命に危険を及ぼさないものの総称です。様々な種類がありますが、膝や股関節の周囲、手の骨などに発生することが多く、歩いている時や運動している時の痛みで発見されたり、骨の隆起や骨折で発見されたりします。痛みがある場合でもほとんどが軽度で、進行することもありません。症状としては、隆起した骨が運動の妨げになる、腫瘍によって弱くなった骨に負担がかかることによって痛みを生じる、といったことがあります。

診断にあたっては、X線検査を行います。必要に応じてCTやMRI、骨シンチグラフィーなどの検査を行う場合もあります。明確な診断をつけるために病変の一部を取り出して顕微鏡で調べることもあります。

良性骨腫瘍は、とくに治療を必要としないものから早期に専門的な治療を必要とするものまで様々な種類があります。手術を行う場合は、その目的として診断を明確にする、痛みや変形などの症状をとるといたことがあります。手術の内容としては、隆起している腫瘍を切除したり、骨内の腫瘍を掻き出して、ほかの場所からの骨あるいは人工骨を移植したりするものです。

軟部腫瘍

軟部腫瘍は、いわゆる患者様が「しこり」として自覚するものです。四肢や躯幹に発生し、多くは良性腫瘍で治療の必要はありません。ただし、5cm以上の大きなもの、深部(筋肉内/筋間)にできたもの、体幹に近いものは悪性であることも考えられますので、生検による病理診断を行う場合があります。

軟部腫瘍で良性のものとしては、よくみられる非腫瘍性の腫瘤としては、ガングリオン、類表皮嚢胞(粉瘤)や滑液包炎があり、また、腫瘍性の腫瘤としては脂肪腫や血管腫などがあります。

「ガングリオン」は手関節の背側に発生するもので、多くは小指大の硬い腫瘤で、内部にゼリー様の液体が溜まったものです。また「類表皮嚢胞」は、新陳代謝によって表皮から剥がれ落ちた垢などの老廃物が、皮膚や皮下に溜まるものです。感染して炎症を起こす場合があります。「滑液包炎」は主に膝の関節や肘の関節に発生する腫瘤で、滑液包に液体が溜まることによって発症します。動かすとわずかに痛みがあります。「脂肪腫」の多くは軟らかい皮下にみられますが、中には筋肉内の比較的硬い脂肪腫もあります。大きなものは悪性のものである場合もあり、検査によって区別する必要があります。