関節の病気、リウマチについて

関節の病気、リウマチのイメージ写真

関節の軟骨と周囲の組織が損傷して関節に炎症などが起きる障害は、加齢に伴って非常に多くみられるようになります。これは関節の軟骨がすり減ることなどによります。いわゆる変形性関節症と呼ばれるものの多くは加齢が原因で、変形性頚椎症、変形性肘関節症、変形性腰椎症、変形性股関節症、変形性膝関節症、変形性足関節症などがあります。

変形性股関節症

関節の中では比較的安定していて変化が起きにくいとされている股関節ですが、体重がかかる部分のため負担は大きくなっています。もともと発育時に股関節の生育不全があったり、加齢によって関節軟骨がすり減ったりすると、股関節の円滑な動作が障害されて変形性股関節症が生じます。骨粗しょう症や関節リウマチが原因となる場合もあります。

変形性股関節症になると、足のつけ根やお尻、膝の上部が重い感じがしたり、こわばったりといった症状が現れます。進行すると歩き始めや長く歩いたとき、階段の昇り降りの際に痛むようになり、次第に痛む時間も長くなって、耐えられないような強い痛みを感じる場合もあります。また股関節の動かせる方向や動く範囲が制限されるようになります。足の爪切りや靴下を履くといった日常動作が困難になり、さらに立ち続けることやしゃがみ込むことが辛くなる、階段では手すりが必要になるなど、日常生活に支障をきたすようになります。

一度変形してしまった股関節は元のように再生することは難しいため、治療としては消炎鎮痛剤などによって痛みの症状を改善しつつ、それ以上進行させないようにする保存療法、もしくは手術療法となります。保存療法としては歩き方や姿勢、生活様式を見直して股関節の負担を減らし、QOL(生活の質)の低下を抑えるようにします。手術療法としては、患部の骨を切って変形を矯正し、膝の内側にかかる負担を軽くする「高位脛骨骨切り術」、変形した部分を人工の部品で置き換える「人工膝関節置換術」があります。

変形性膝関節症

主に加齢や肥満などが原因となり、膝関節の軟骨がすり減ることで変形性膝関節症は発症します。加齢とともに軟骨が十分に再生されにくくなって、軟骨の下の骨もすり減ってくることで、炎症や痛みが生じ、関節がスムーズに動かなくなります。また膝周囲の筋肉や組織も硬くなることも膝関節への負担となり、症状を助長します。50~60歳で発症することが多く、男性よりも女性の方が約4倍多いという報告があります。

変形性膝関節症を発症すると、立ち上がる際や階段の上り下り、しゃがむ動作をする時などに痛みが現れます。さらに正座ができなくなる、膝に水が溜まるといった症状も現れます。筋力が低下して体重を支えられなくなると、歩行時にも痛みが生じ、進行して末期になると、軟骨がほとんど失われ、O脚になるなど足が伸ばせず、歩行が困難になることもあります。

治療に関しては、初期の段階であれば薬による治療とリハビリテーションを行います。薬による治療としては、消炎鎮痛剤の内服やヒアルロン酸の関節注射などがあります。リハビリでは筋力を保つための運動療法、適切な装具を用いる装具療法、膝の可動域を拡大し膝周囲の組織や筋肉の柔軟性を改善させる物理療法などを行います。こうした治療で痛みが軽減しない、日常生活に困難をきたす、といった場合には手術を行います。手術としては残された膝関節の機能を最大限活用するための関節鏡による手術や、膝周囲の骨切術、さらに人工関節に置き換える手術などがあります。

関節リウマチについて

関節リウマチは全身の関節に関節炎が多発し、様々な障害を引き起こす病気です。原因はまだよくわかっていませんが、「膠原病」の一種と言われ、関節などにおける自己免疫の異常によって引き起こされると考えられています。現在日本では約60~70万人が関節リウマチであると言われています。30~50歳代の女性に多くみられ、女性は男性の約3倍の頻度で発生します。

関節リウマチの初期の代表的な症状としては、「朝のこわばり」と呼ばれるものがあります。これは朝起きた際、指などの関節が固まったようになり、動かしづらくなるものです。30分~1時間ほどで動かせるようになりますが、病気が進行するに従ってなかなか元に戻らなくなります。ほかにボタンがはめにくくなる、ハサミなどの道具が上手く使えなくなる、手首や膝関節が痛むといった症状や、全身のだるさや熱感を生じる場合もあります。進行すると関節の組織が破壊され、変形をきたしてしまいます。

関節リウマチの治療にあたっては、まず各種検査を行って関節リウマチであるという診断をつけることが大切です。検査では炎症を起こしている関節の部位や数、また血液検査によるリウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体の陰性、陽性など総合的にみて判定していきます。

関節リウマチの治療では病気の進行を止め、腫れや痛みを取り、関節破壊を予防するなど機能低下を防ぎ機能回復を図っていくことが目標となります。近年では、痛みを和らげる消炎鎮痛剤やステロイド剤、抗リウマチ薬(DMARDs)であるメトトレキサートなどの内服薬のほか、注射や点滴で投与する生物学的製剤も開発されており、免疫抑制による治療効果も高くなっています。

こうした薬物療法に加え、身体機能の低下を防ぐためにリハビリテーションを行うことも有効です。運動療法や物理療法等で機能の回復・維持を図りますが、炎症を起こしている時は悪化の危険がありますので、医師の指示に従って行います。また動かすと痛みを生じる場合は装具などで固定することもあります。関節破壊が進んでしまった場合は、人工関節置換術によって機能を回復するという方法があります。

関節の外傷について

外傷とは外部からの物理的な力によって組織が損傷してしまうものです。関節に関わる外傷としては、骨折、脱臼、捻挫、また膝関節でよくみられる靭帯損傷や半月板損傷などがあります。

前十字靭帯損傷

前十字靭帯は膝関節のほぼ中央にあって、大腿骨と脛骨を支えており、主に脛骨が前方にずれることを防いでいるものです。損傷の原因となるのは、サッカーやバスケットボールといった、ジャンプして着地する、急激に止まったり方向転換したりするスポーツであることが多く、交通事故でも発症する場合があります。

発症するとガクッと膝が抜けるような感覚があり、断裂した場合はブチッと音が聞こえることがあります。激しい痛みがあり、自力での歩行が困難になって、出血すると関節内に溜まって急激に腫れがみられるようになります。

損傷した靭帯はそのままでは元に戻りません。部分損傷の場合、スポーツをされない方や高齢の方では保存療法という選択肢もありますが、完全に断裂している、スポーツに復帰するという場合は、靭帯の再建手術を行います。

半月板損傷

半月板は膝を構成する大腿骨と脛骨の間にあって、クッションの役割りを果たしている軟骨の組織です。損傷すると膝の曲げ伸ばしの際に痛んだり、引っ掛かりを感じたりし、正座が困難になります。重症になると膝に水が溜まったり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」という状態になったりします。痛みが強くなると歩行困難になり、変形性膝関節症を引き起こす場合もありまます。

半月板損傷の原因としては、スポーツでのケガや日常での転倒などで膝を捻ってしまい、その際に半月板が大腿骨と脛骨の間に挟まれて、損傷することが挙げられます。捻った際に前十字靭帯を損傷と半月板損傷が併せて起こることも少なくありません。また高齢の方では半月板が変性して損傷していることがあり、痛みや引っ掛かりなどの症状が現れる場合があります。

半月板損傷は、軽度であれば安静にしていることで痛みなどの症状が軽快する場合も多くあります。程度によっては消炎鎮痛剤の使用やヒアルロン酸の関節注射などを行い、経過観察を行います。また膝への負担を軽減し、痛みを和らげるリハビリも有効で、筋肉や靭帯の緊張を緩めるストレッチ、膝周辺の筋力強化を図る筋トレ、体重を減らすウォーキングなどの有酸素運動などを行います。これらは医師の指示に従って行うようにします。

こうした保存療法のほか、スポーツへの復帰を目指す場合などは、ダメージを受けた部分を縫い合わせる縫合術、ダメージを受けた部分を取り除く切除術などの手術を検討します。これらは基本的に関節鏡を用いて行われます。患者さまそれぞれの状態や目標を踏まえつつ、治療法を選択していきます

外傷などで手術が必要とされた場合は、連携する専門病院をご紹介いたします。また保存療法でも手術を行った場合でも、リハビリテーションが大切ですが、手術後のリハビリテーションも当院にて受けていただけます。